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次の破壊的イノベーションは、ブロックチェーンである
金融セクターの人とコアなブロックチェーン・トークをするときのネタ本に使えると思う。
たぶん。

これは本物の技術だ!

と著者が熱く語るくらい、本書の主眼はとにかくブロックチェーン。
ブロックチェーンが中核技術のBitcoinは、豚カツのキャベツ扱いです。
キャベツ美味しいけど。

ただ、第5章以下が、金融関係者向けのコアトークでそこそこハードです。コルレス銀行とかノストロ照合とか。注釈ついてるけど、テクニカルで、呪文感がすごい。。

日銀で法定通貨の電子化のプロジェクトに関わっていただけあって、「具体的に運用しようと思うと、〇〇な課題をクリアすべし」と、とにかく運用面を意識してブロックチェーンを解説しているのが本書の特徴。

2100万BTCという発行上限、リワードの4年ごとの半減の仕組みを知ると、Bitocoinは通貨にはならず、投機目的の金融商品(FX)になる、という著者の主張に強い説得力を感じる一方で、資産の保蔵先として、現在の法定通貨が今後も安定して支持されるかというとムムムな感じ。世界的な金余りで仮想通貨がバブったように、社会の「信用」はこれからも投下先を求めて彷徨うし、一連の暴投暴落で仮想通貨オワコン、というわけでもなさそうに感じる。

それから、各国中央銀行の取り組み。

銀行から預かった法定通貨を中央銀行が電子通貨化し、銀行間取引に利用させ、その日の終わりに回収、法定通貨と変換する、という仕組みは確かに銀行間取引コストを下げるなーと。特に海外送金などで、銀行の手数料が下がることに期待感が高まります。リップル・プロジェクトはじめ、どこが国際金融の送金プラットホームで主導権を握るのか今後の動きに注目したい。

あとは、読んでいてい、ずっと頭の片隅にあったのは、

これから、トークンエコノミーが
緩やかに重層的に広がるなかで、
既存の金融リテラシーの
どこを押さえておけば良いのだろう


ということ。

円やドルに信頼を持てないから、仮想通貨をもっている、という人たちは、上位1%が90%のコインを保有しているという早い者独占のBitcoinに、どういったインセンティブを感じて手を出しているのだろう。リスクヘッジとか、そのあたりのスタンス、超聴いてみたい。

もう一つだけ。

2000年にシンガポール中央銀行が法定通貨の電子化をしようとしたけど、決済端末を国内の隅々まで行き渡らせるコストが高すぎて断念。いまは、スマホ普及率がたかいので、そのインフラコストの壁を超えた、という話。
スマホ決済@中国のアイデアはたくさんの先例の上にあったのね、というのが新鮮でした。

ごちそうさまです。
 このようにビットコインは、将来の供給量が定められているため、その価格は、もっぱら需要面に依存することになります。ビットコインの新規供給が減っていく中で、もしビットコインに対する需要が現状を維持する(あるいはさらに高まる)とすると、需要と供給の関係により、価格はどうみても上昇するしかありません。希少性が段々と高まっていく仕組みになっているため、理屈としては、値段が上がりやすくなっているのです。そうすると、ビットコインは、本来の目的である「交換手段」(medium of exchange)としてではなく、「投資用資産」(investment asset)として用いられることになります。明日値上がりすると分かっていれば、誰もそれを今日の支払いには使わないからです。
 このように、ビットコインは、発行上限という仕組みがあることによって、その性格が「通貨」から「資産」に変質しています。通貨として使うためには、その価値が安定していることが前提になりますが、発行上限の存在によって、値上がりを見込む人が増えているため、もっぱら投資のための資産となってしまっているのです。(p81-82)




6. 健全なコミュニティはできているのか?

  (1)1%の人が9割のビットコインを保有

 ビットコインの開発にあたって、開発者のナカモト氏は、多くの利用者が取引の検証作業を薄く広く分担して、利用者がみんなでビットコインの仕組みを支えていくといった、ややユートピア的な世界をイメージしていたように思われます。
 しかし、実際には、ビットコインの実態は、そのようにはなっていません。前述のように、ビットコインの保有構造は、「上位I%の保有者が全体の9割を保有」、「上位3%の保有者が全体の97%を保有」といった形で、「一握りの人が独占している」と言える歪な保有構造となっています。
 マイニングについても、大規模なマイニング・ファーム上位13社が8割ものシェアを占めており、特に中国の採掘集団が世界のマイニングの7割を担っている寡占状態となっています。このため、「分散的であったはずのビットコインは、ほんの一握りの人々によって管理されている」、「万里の長城の向こう側にマイニングの能力が集中している状態は問題であり、たった10人ほどの人々が牛耳っているビットコインに将来はない」と言われる状況になっています。
 ビットコインの取引をみても、中国の3つの取引所における取引高が9割以上と圧倒的なシェアを占めています。まさに「中国人がマイニングして、中国人が売買し、中国人が保有するビットコイン」とも言えるような状態となっています。
 このように保有構造、マイニング構造、取引構造のいずれをみても、ビットコインは、かなりゆがんだ構造となっており、幅広いユーザー層を獲得することができていません。ビットコインは、当初は「高潔な実験」とも言われ、目指したところは崇高だったのですが、その目的は必ずしも達成できているとは言えない状況にあります。

  (2)どうして保有の集中を招いたのか?

 こうした偏りを招いた理由としては、以下の2つが考えられます。
 第1は、通貨や支払手段として開発されたにもかかわらず、マイニングに対して多額のリワードが与えられるというインセンティブの仕組みが、あまりにも強く作用してしまったことがあります。確実に経済的な見返りが得られるのであれば、そこに大規模な投資を行って、多くのリワードを得ることは、マイナーにとっては合理的な選択となります。また、仮想通貨という一般の人には馴染みが少なく、かなり特殊な世界であることや、立地(電力料金の水準)にも左右されることから、一部の国に集中した「早い者勝ち」的な状況が発生しており、健全な競争原理が働かず、マイニングの寡占状態が続いています。
 第2に、「規制のない支払手段」としての側面が注目されてしまったことです。シルクロード事件などを通じて、一般的で健全な支払手段としてよりも、匿名性が高く、違法な送金にも使える手段としての側面が強調されてしまいました。また、中国では、資本規制を回避する手立てとして注目され、ここ2年間にわたり、世界で取引されるビットコインのほとんどを中国人が買いあさるという「中国人による爆買い」の状況を招いてしまいました。こうした状況は、規制回避を目的とする利用者は増やしたかもしれませんが、逆に、健全な支払手段としての利用者の幅の広がりにとってはマイナスの影響を及ぼしたものとみられます。実際、ビットコインの保有構造は、少数の人がほとんどのコインを保有するという「一握りの人による、一握りの人のためのビットコイン」となっていることはすでに述べたとおりです。(p101-103)




現在のICOについても、世界的なカネ余り現象の下で、「○○コイン」と名付ければ何でも飛ぶように売れるような状態であり、仮想通貨からの「派生バブル」として、「ICOバブル」が発生している可能性が高いものとみられます。
 なお、ICOに参加するためには、その前に買い付け用の仮想通貨が必要になります。このため、ICOによく用いられているイーサリアムの価格は、ビットコインより遥かに高い上昇率を示しています。2017年初めから8月半ばまでの動きでみると、ビットコインがこの間に約4倍になっているのに対して、イーサリアムは30倍以上に値上がり(10ドルから300ドル台へ)しています。ICOの盛行と払込みのためのイーサリアム購入が相互に正のスパイラルとなって価格が高騰する状況になっています。ただし、この循環が逆回転したときには、逆方向(価格下落)のスパイラルが発生する可能性もある点には注意が必要です。レバレッジが逆回転したときの市場崩壊の怖さについては、我々は、リーマンーショックによる金融危機の際に経験したばかりです。(p112)



  (2)合意形成の手法:コンセンサス・アルゴリズム
 オープン型とクローズド型の区別が重要なのは、それが「合意形成」の方法に密接に関係してくるためです。合意形成というのは、分散したデータベース上に多数存在する台帳情報を、ネットワーク上の全員で共有するための手法です。具体的には、一定期間の取引をまとめて承認し、次のブロックを生成するためのプロセスとなります。
 こうした合意を行う方法は、一般に「コンセンサス・アルゴリズム」と呼ばれます。ビットコインでは、コンセンサス・アルゴリズムとして「プルーフ・オブ・ワーク」という手法が用いられていますが、このほかにも、複数の方法があります(詳しくは、後述します)。
 さて、ビットコインのような「オープン型」では、世界中の誰もがネットワークに参加することができ、また取引の承認作業(マイニング)にも、誰もが参加することができます。このため、取引データを改ざんして不正なブロックを作成しようとする「悪意の参加者」が入ってくる可能性があります。そこで、こうした悪意の参加者がいても、正しいデータのみが次のブロックとして記録されるようにしていくために、取引の承認には複雑な計算が必要とされ、また取引承認までには約10分を要する仕組みとなっています。つまり、オープン型は、完全に信頼できない者同士のネットワークとなるため、取引の承認には厳格な手続きが必要とされるのです。
 一方、「クローズド型」であれば、許可された先のみが参加者となるため、こうした悪意の参加者が入る余地はかなり少ないものと考えられます。このため、限定された参加者のうち、一定比率の合意によって取引を承認するといったかたちで、より簡便な方法で取引の承認を行っていくことが可能となります。つまり、クローズド型では、取引を高速で処理できる(即ち、一定時間内に多数の処理ができる)コンセンサス・アルゴリズムを採用することができるのです。また、クローズド型には、中央の管理者がいますので、万が一、不適切な取引を行うような参加者がいたような場合には、その参加者をネットワークから外すといった形で安全性を確保することができます。
 前述のとおり、ビットコインにおいては、取引の承認のために「プルーフ・オブ・ワーク」という方法を採用しており、コンピュータにより負荷の高い数学的な問題を解くことが必要で、また、取引が承認されるまでに約10分を要する仕組みとなっています。こうした膨大な手間をかけているのは、ひとえにビットコインが参加者を限定しないオープン型の仕組みとなっているためです。オープン型では中央管理者がいないため、不正に対しては、ネットワーク上の皆が協力して監視することが必要となっており、そのためにかなりの手間やコストがかかっているのです。
 これに対して、初めからクローズド型の仕組みとすることにより、予め参加者を限定し、また信頼できる参加者のみが取引を承認することによって、高い安全性が確保されるのであれば、取引のたびに膨大な計算処理を行ってコンセンサス形成を行わなくても済むのです。これにより、迅速な取引の確定を行い、短時間のうちに大量の取引を処理することが可能となります。これは、金融取引にブロックチェーンを導入するうえでは、大きなメリットであると言えるでしょう。(p131-133)




 ここまで述べた3つの仕組み(PoW、PoS、PoI)は、悪意のある参加者がいることを前提として、厳格な方式で不正を排除する仕組みになっています。これらの方式では、すべての参加者(ノード)にブロックの生成権限があるため、特定の管理者を介さずに合意形成を行うことができる点がメリットです。しかし一方で、承認までにはある程度の時間がかかるためリアルタイム性に欠けるほか、取引の完了性(ファイナリティ)を完全には確定できないといった限界があります。

ぜ騨囘ビザンチン・フォールト・トレランス(PBFT)
 これらに対して、最近注目が高まっているのが「実用的ビザンチン・フォールト・トレランス」(PBFT)という合意形成の手法です。PBFTでは、「アプリノード」と「コアノード」の権限を区別します。コアノードは、取引を検証する権限を持つノードであり、「検証ノード」とも呼ばれます。一方、アプリノードは、取引を行うことはできますが、検証は行わないノードであり、「非検証ノード」と言うこともあります。
 PBFTは、コアノードに取引承認の権限を集中させ、コアノードによる合議制によって、取引の承認を行う仕組みです。一定割合(3分の2以上など)のコアノードが合意した段階で、正当性が認められたものとして、取引(トランザクション)が承認される仕組みとなっています(図表3−6)。
 PBFTでは、一部の信頼できるコアノードによる合議(しかも一定割合の合意のみでよい)によって取引承認が行われるため、迅速かつ確実な価値(資産など)の移転が可能となっている点がメリットです。つまり、コアノードによる迅速な取引承認により、一定時間内に多くの取引処理を進めること(高いスループット)が可能となっています。また、コアノードによる合議によって次のブロックが生成されるため、「ブロックチェーンの分岐」(フォーク)という問題が発生せず、取引が承認された時点で、直ちに「決済完了性」(ファイナリティ)が得られることも大きなメリットです。
 金融分野での利用を考えた場合には、‖舂未亮莪をリアルタイムに処理できることと、▲侫.ぅ淵螢謄い鯀甦に確保することは、必要不可欠でかつ重要な要素となります。こうした特性から、PBFTは金融取引と相性がよいものとみられており、金融分野の実証実験では、このPBFTが比較的多く用いられています。(p135-136)




 このように考えると、金融分野に分散型台帳技術を導入する場合には、〇臆端圓糧楼呂鮃覆蟾むクローズド型とし、合意形成は、取引の高速処理が可能な実用的ビザンチン・フォールト・トレランス(PBFT)系のアルゴリズムや当事者間による取引承認によって行い、I要な場合には、ノードによって役割を分け、ぅ肇薀鵐競ションの検証・承認には特にリワードは与えず、ゼ莪当事者以外には取引内容が見られないようにプライバシーの制限を行う、といった方向性が自ずと明らかになってきます。金融分野で行われている実証実験の多くでは、こうしたアレンジメント(導入方法)により、ブロックチェーン/分散型台帳技術の実用化を図ろうとしています。
 このように予想されるブロックチェーンのアレンジメントは、ビットコインの仕様からは大きく異なったものとなっています。ビットコインでは、誰もが当局に管理されることなく、世界中で自由に価値を移転できるようにするという、いわば、「取引の自由」や「参加の自由」に重きを置いた設計思想になっていました。これに対して、今後、金融分野で導入されるとみられるブロックチェーンでは、「取引の安全性や信頼性」「取引のリアルタイム性」「早期の決済完了性(ファイナリティ)」などが重視されていくことになるものとみられます。
 こうしたブロックチェーンの仕様は、ビットコインにおけるプルーフ・オブ・ワークやマイニングなどのような常識破りの仕組みに比べると、やや地味に見えるかもしれません。しかし、人々が金融に求めるものは、世界を変えるといった「夢」や「革新性」よりも、「信頼」や「安心」ではないでしょうか。また、金融取引では、一定時間に数多くの取引を処理することや、取引を順次確定させていくこと、また取引のプライバシーを守ること、などが求められるのです。長年の金融の歴史を通観すれば、この先、ブロックチェーンービジネスが進んでいく方向性は自ずと見えてくることになるでしょう。(p148-149)




 リクスバンクでは、今回のeクローナの発行計画を進める理由について、「国民の現金離れの状況に対して危機感を抱いており、中央銀行として何もしない訳にはいかないため」と説明しています。この「危機感」の中身については、詳しく語られてはいませんが、中央銀行に長くいた立場からすると、主に「通貨発行益」(シニョレッジ)の減少に対する危機意識ではないかと考えられます。
 シニョレッジとは、通貨を発行したことによって中央銀行が得る利益のことです。この利益がどうして発生するのかは、中央銀行のバランスシートを考えると理解することができます。すなわち、発行された銀行券は中央銀行のバランスシートの負債サイドに計上されますが、負債(借金)といっても銀行券には金利は支払われません(無利子です)。また、同じく負債に計上され、銀行券よりさらにウェイトの大きい民問銀行から頂かっている当座頂金にも、多くの場合、利子は付きません。その一方で、資産サイドでほとんどの割合を占めている国債や貸付金には、利子が支払われます。このように、中央銀行のバランスシートは、無利子で調達した資金で、利子の付く資産を保有するという構造になっており、このため、毎年かなりの利益が出るビジネスモデルとなっているのです。つまり、中央銀行は、銀行券をたくさん発行してバランスシートを大きくすればするほど、利益が出る仕組みとなっているのです。
 しかし、銀行券の発行額が減ってくると、それに見合った形で保有する利子の付く資産(国債など)の規模も縮小するため、中央銀行の収入は先細りとなります。シニョレッジは、独占的な通貨発行権が認められた結果として発生するものですので、中央銀行が業務遂行に必要とする経費(人件費、システム経費など)を差し引いて、残りは全額、国庫に納付されます。しかし、中央銀行のバランスシートが縮小して、通貨発行益が極端に細ってくると、シニョレッジによって中央銀行の運営費用が十分に賄えないといった事態が想定されるのです。リクスバンクの言う「危機感」とは、このことではないでしょうか。
 中央銀行が発行すれば、物理的な現金でも、デジタル通貨であっても、それに対する通貨発行益が得られるという点では同じです。そして、デジタル通貨の使い勝手がよければ、現金からの単純なシフトだけではなく、中央銀行の通貨発行量(現金+デジタル通貨)は全体として増えるでしょうから、その分、通貨発行益が増えることになるでしょう。デジタル通貨の発行を急ぐスウェーデン中央銀行の狙いは、ここにあるのではないかと筆者は考えています(最も現金の利用率が低い国の中央銀行が、最初にデジタル通貨を発行しようとしているのは、ある意味で筋が通っています)。
 なお、リクスバンクでは、「eクローナは、現金を『補完』するものであって、完全に『代替』するものではない」としており、eクローナの発行後もクローナ銀行券の発行自体は継続していく意向です。(p184-186)



 銀行の中抜きの発生
 もう一つの問題が、中央銀行がデジタル通貨を国民に直接発行して、決済を行わせることにすると、「銀行の中抜き」が発生してしまうことです。銀行券(現金)については、中央銀行が民間銀行にまとめて発行し、個人や企業は銀行のATMなどから現金を引き出すというかたちで、民間銀行が、中央銀行と企業や個人との間の仲介者(ミドルマン)としての役割を果たしています(図表5−1の 198頁)。また、銀行口座を使って決済を行うために、企業や個人が民間銀行に決済用の預金(普通預金、当座預金など)を持ち、それを使って口座振替、口座引落しなどを行うのが一般的となっています。
 ところが、中央銀行から直接発行を受けたデジタル通貨を使って、個人や企業が誰とでも直接に決済できるようになったとすればどうでしょうか(図表5−Iの◆198頁)。この直接発行型のデジタル通貨が広く普及した世界を考えると、人々は銀行のATMに銀行券を引き出しにいく必要はありませんし、また、そもそも銀行に送金や引落しのための決済性の預金を持つ必要さえなくなってしまいます。つまり、銀行の主要業務の一つである「為替業務」が不要となり、決済業務において銀行の中抜き現象が発生してしまうのです。
 もう一つの深刻な問題が、銀行の貸出業務への影響です。銀行預金からデジタル通貨へ大量のシフトが発生して、銀行預金が大幅に減少したとすると、銀行には貸出のための原資が少なくなり、貸出を行うことが困難になります。それにより、これまで銀行が担ってきた預金・貸出のメカニズム(金融仲介機能)に深刻な影響が出ることになります。銀行の貸出能力が低下すれば、銀行からの借入に依存していた中小企業や個人には大きな打撃となるでしょうし、そもそも経済活動の潤滑油がなくなって経済がうまく回らなくなってしまいます。中央銀行がデジタル通貨を発行することによって、こうしたかたちで民間銀行の役割を奪ってよいのかということは、当然、大きな問題となるでしょう。
C羆銀行口座の開設範囲をどこまで認めるか
 中央銀行がデジタル通貨を国民に対して直接発行するということは、前述のように、あたかも国民一人一人が、中央銀行に口座を持つようなものとなります。このことは、中央銀行の口座へのアクセスをどの範囲まで認めるのかという問題を引き起こします。現状でも、どのような主体に中央銀行の口座の保有を認めるかは、中央銀行によって多少違いがあり、預金を取り扱う金融機関に限定している先(米国など)や、銀行以外の金融機関(証券、生損保など)にも幅広く認めている先(日本など)などがあります。しかしいずれの場合でも、原則として広義の金融機関に限られており、企業や個人にまで幅広く口座の開設を認めている中央銀行はみられません。
 今後、現金型デジタル通貨の発行を考えた場合には、この中銀口座の開設範囲の問題をクリアする必要があります。この点の解決法としては、金融機関に認めている当座頂金口座とは別の種類の、特別な「デジタル通貨口座」(デジタル・カレンシー・アカウント)を新しく創設するという手段も考えられます。ただし、その場合にも、口座管理に関する膨大な業務(現在、民間銀行が顧客に提供しているカスタマー・サービス)を中央銀行が行うのかといった問題は残ります。そうした業務は、中央銀行にとってはあまり得意分野ではありませんし、中央銀行員のマンパワーの限界を考えると、どうも現実的ではないような気がします。

* * *

 このように考えると、中央銀行が国民に直接デジタル通貨を発行するという形態は、現在の銀行券(現金)に類似のかたちであり、最もイメージしやすいものですが、現実には検討すべき課題が多く、現状の技術を前提にすると、なかなか実現は難しいのではないかというのが現時点での結論となります。こうした現金型デジタル通貨の構想としては、Fedコイン(米国)やeクローナ(スウェーデン)がありますが、いずれもまだ構想段階のものです。各国中央銀行による実証実験でも、このかたちを実際に試みた先はまだみられていません。それだけ各国中銀でも、この形態についてはハードルが高いとみていることの証左でしょう。(p203-205)



「メインチェーン」を中央銀行が管理する一方、顧客との関係を維持する「分散系のサブチェーン」は民間銀行が管理するという2段階のアプローチは、仝什澆亮莪の姿にも近く、銀行の中抜き問題が発生しないこと、中央銀行が膨大な取引の管理や顧客との直接の関係維持を行う必要がないこと、といった点で「筋がよい」ものとみられ、注目に値するものと考えられます。このRSコイン方式がそのまま実現するかどうかはまだ不透明ですが、少なくとも、中銀が直接発行する現金型デジタル通貨に比べると、こうした2段階方式の方が、現実性が高いアプローチであるということは言えるでしょう。(p210)




  (1)印紙を使った「ゲゼルのスタンプ付き紙幣」

 実は、通貨にマイナス金利を付けるというアイデアは、ドイツの経済学者であったシルビオ・ゲゼルが、かつて1920年代に提案しています。ゲゼルが考案したのは「スタンプ付き紙幣」と呼ばれる方式でした。これは、紙幣の所有者が郵便局などで印紙(スタンプ)を購入し、毎月それを貼り付けなければ貨幣としての価値を保持できないようにしたものです。つまり、時間がたつと、印紙代の分だけ紙幣の価値が低下していきますので、いわばその分の「マイナス金利」が付いた通貨となります。印紙代は、1週間で額面の0.1%、年率で5.2%に設定されました。
 マイナス金利付きの紙幣は、それを長く持っていると価値が低下して損をすることになるため、所有者はなるべく早く使ってしまおうとします。それによって、紙幣が次々に使われると、貨幣の流通速度が上がるため、景気を刺激する効果を持ちます。このスタンプ付き紙幣は、1930年代にドイツ、オーストリアなどで特定地域における「地域通貨」として実際に導入されました。そして、マイナス金利の効果により、導人した地域で消費促進の効果をもたらしたものとされています。

  (2)デジタル通貨を使えばマイナス金利が実現できる?

 ゲゼルのスタンプ付き紙幣は、アイデアとしては大変に興味深いものですが、実際にこの制度を導入するとなると、紙幣の1枚ごとに毎月、印紙を貼り続けていくという気の遠くなるような作業が必要になります。このため、良いアイデアではあっても、あまりに手間がかかりすぎて、実際に国レベルでこれを運用することは現実的ではありません。しかし、これと同じことを、電子的に手間をかけずにできるとしたらどうでしょうか。
 たとえば、中央銀行発行のデジタル通貨が広く普及した世界において、中央銀行が台帳上の残高を一定期間ごとに一律に減らしていくことにすれば、電子的な形で、マイナス金利を付けることができます。たとえば、デジタル通貨の台帳で1000円の残高が1年経つと990円になるように設定すれば、△I%のマイナス金利を実現することができます。そうすると、人々はなるべく早くデジタル通貨を使おうとするでしょうから、デジタル通貨の流通速度が上がって、国全体として消費が促進され、景気が上向くことが期待されます。つまり、消費や投資を刺激するための金融政策として、デジタル通貨へのマイナス金利の付利を使うことができるのです。(p218-219)
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