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天狗小僧魔境異聞
評価:
坂東 眞砂子
文藝春秋
¥ 5,549
(2011-03)

江戸時代を起点にしたタイムトリップ小説。
平田篤胤の「仙境異聞」のエピソードを軸に物語を組み立てたものと思われます。よくここまで物語化できたなと、改めて坂東眞砂子の腕に舌を巻きました。
曲亭馬琴、などがでてきます。
人間の業の深さや狂気に飲まれていくまでの過程をヌメッとしたリアルで提示してくる坂東スタイル、健在です。
「曲亭先生に、なにをいおうとしたんじゃ」
 嘉津間は答えるのをやや躊躇った。先はどの馬琴の言葉が引っかかっているのだ。
 「わしは曲亭先生とは違って、なんでも知りたい。心を遊ばせ、荒唐無稽なものを書くことを求めてはおらんからな。ただ、知ったことをすべて書きたいだけなんじや」
 「そうでございますね……。実は、さっき、いおうとしたのは、一番、恐ろしいのは、寿命が来ても、死なないことだと……。わたしの行った魔境では、世に役立ちたいという気力も体力も失い、人生のやるべきことを終えたのに、死ぬことができない童翁たちが彷徨っていましたから」
 まっすぐに区切られた田畑。その間を貫く黒い道。そんな中で心を恍惚に委ねて、右往左往する童翁たちの姿を想像して、篤胤はもの悲しい気分になった。
 確かに、人が生きるのは、世の役に立ちたいという気持ちがあってのこと。神田川の橋の快で出会った乞食婆が惚けたのは、家を追いだされ、役立つ場を失ってからではなかったのか。世の中にしろ、家族のためにしろ、何かの役に立ちたいという気持ちを失うと、人の心は虚ろになり、死霊や妖魔を迎える袋となってしまう。(p126)
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