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中国人社員、活用の試み_2
昨今、急速に注目をあびている海外BPO(Business Process Outsourcing)。入力業務やコールセンターなどを海外に外部委託することをさす。日本でとりおこなっていた業務を海外でいかにして運用するのか。その鍵はやはり、「人材」に集約される。
東京と中国遼寧省大連市でBPO事業を展開されている、HuojinJapan株式会社(大連活今信息科技有限公司)の三好氏に、中国での人材活用についてお話をうかがった。


Q:中国ビジネスで、何に気をつければよいでしょうか。

「中国の統計はまったくあてにならない。役人が適当につくっただけで、信憑性ないでしょ」――中国の統計資料について・・・、と話題をふると話を最後まで聞かないで、さえぎってしまう中国通の方がいます。ちなみに、ぼくはちがう捉え方。統計データも幅でみれば、充分参考になります。ある指標をさぐっていくと、流れと世相が反映していることがわかります。

細かい部分をみるとつじつまがあいませんが(※1)
 
ざっくりみると大筋あっている



すごく面白い数字だなとおもったのは、大連市が毎年発表している平均人件費。」――中国においては「平均」をおうことは意味がない。だって相場がないんだから、といわれる(※2)。市全体だと平均給与水準は微増、でも平均人件費(※3)は5年間で倍増していました。自社はどうだったか。この5年間で特定の業務に支払っている給料は微増。つまり、給与水準や相場が全体的に上がっているわけではないことがわかった。でも自社のデータを5年分みくらべると平均人件費は倍になっていた。
ぼくの解釈は、より高い給与をもらえる労働者がふえた。高い給与をもらえる仕事にチャレンジできる機会がふえたんじゃないか。で、自社をもう一度みかえしてみると、やっぱりおなじ現象がおきている。5年前は1人しかいなかった高度業務従事者がいまは10人も。お客様の要求水準も高くなってきたし、「高度な仕事しかやりたくありません」という若者もふえてきた――この動きは顕著です。ここまで話したら冒頭の中国通の方も納得いくかもしれないけれど、だいたいは最後まで聞いてくれません(苦笑)。

※1
角度をかえてみればみえる。現実の事象と照らしあわせてみるとみえるものがある。マクロ指標ってそんなもんですよね
※2
同じ学歴、能力であっても会社によって初任給が3倍ちがう。同じ組織でも上と下でも十数倍ちがう。「20代後半で、○○産業の事務作業をやっていたら、いくらいくら」というのがあってないようなもんなんです
※3
企業が福利厚生とかも含めて、企業が払っている人件費総額
若者の仕事にたいする要求があがってきた、というのは2パターンあって。昔からよくいわれているのは北京大学卒業生。新卒にもかかわらず、地方企業の部長級の給料をいきなりもとめてくる。村全体から英雄のようにおくりだされて、親戚の集まりでもちやほやされるくらいのエリートなので、ふつうの仕事だとプライドがゆるさないんでしょうね。「わたしは5,000元くれないと働きません」経営者と話すとかならずでてくる話題。いってるわりにつかいにくい。
ぼくがいった「高度な仕事しかやりたくありません」の主語は北京大卒ではなくて短大卒クラスの子たちのこと。機械にリプレイス可能な単純作業じゃなくて、判断をもとめるような仕事につきたい、という希望がふえたということ。
教育水準のちがいってあって、どんなにトレーニングしても伸びない子もいる。でも、一定の割合で地頭がしっかりした賢い子はいる。「やりたいです!」「よし、じゃあやってこい!」背伸びさせると、バシッとやってくる。彼ら彼女らは見ていないところでも努力して現実にしちゃう。かれらの面子がかかってますからね。

背伸びをさせるマネジメントは
 
中国では絶対に必要



やらせてだめだったら、残念だったね、つぎどうしようか、となるだけです。やらせるときはしっかり能力をみきわめて、ポテンシャルの1.2倍を目標に設定する。結果的に実行できないことがありますが、それはかける期待がおおきすぎるんでしょうね。

――あなた新卒でなにもできないでしょ。1000元からのスタートで充分じゃないですか
「いいえ。わたしは日本語すごい勉強しましたし、頭もすごくいいです。いきなり2500元の職位の仕事をしても他のひとたちに負けない自信があります」
――そう?でもまあ、下からやってみようよ。半年で「できる」ことを証明したらいいじゃない
「いいえ。認めてくれなかったら、この仕事をつづけません」

そういって他の企業にいってしまうひとが最近ふえた。新卒がこれだから、中途を雇おうとすると相当高くつく。「これだけやってきたから、次の仕事では○○元以上でないと絶対にダメです」採用コストがどんどん高くなるんですね。新卒の3,4倍くらいでしょうか。なら、真っ白な新卒を一年かけてリーダーシップや問題解決をたたきこんで育成したほうが会社の負担を抑えられるんです。


Q:マネジメントにたいする需要・供給ニーズは高まっているのに、企業と個人がかみ合わない。なぜでしょう?

日系企業はマネジメント層がほしいというけど
 
「どうすればマネージャーになれるのか」
 
ソリューションを提示できていない印象をもちます



ひたすら下積みをしなさいといっても、オペレーションのプロになるかもしれないけれど、マネジャーには抜擢できないじゃないですか。
ぼくは社員にいつもいうんですね。あなたは各業務プロセスの職域プロになりたいの?ちがうでしょ?職人になるために業務目標を達成するんじゃなくて、どんなチームを管理しても達成できる経験を積むためでしょ?サービスレベルの向上、問題解決と人材育成――これを身につけることがあなた仕事であって、生産性を10%あげるのがあなたの仕事なんじゃないんだよ、って。いずれこの会社を辞めるでしょ?そのときに「マネジメントとしてこれだけの経験をしました」といえばいい。そのためにはぼくらも最高の環境を用意できるよう努力するから。職人的な個別の業務スキルを極めても、きみが目指す高級管理職に近づいていくことはできないんだよ。そこをはきまちがえないようにしなさい――ぼくはくりかえし伝えています。

全社員60人のうち、正社員30人は全員がマネージャー候補生。きみたちのミッションは業務管理。レベルや規模にちがいはあるかもしれないが、マネジメントをして新しい仕事をどんどん産みだすような、そんな人材になってほしい。ぼくは、Huojinから有能なビジネスマンを輩出したいんです。いつか履歴書に「Huojin」という言葉をみつけて、採用担当者が「あなた3年もHuojinで働いていたんですか。じゃあ安心ですね」こういわれることをめざしています。

マネジメントツールとして、問題解決実行体系というものがある。問題解決をフォーマットにおとしこんで、末端社員まで休憩時間でもやらせている。用紙が7つあって。

 用紙1― 部門内の問題点を羅列させる。右欄に重要度、優先度をかく。
      みんなで意見をだす

 用紙2― マトリクスに問題点をプロットさせる。
      最重要象限になにがはいるか、でるかをみんなに議論させる

 用紙3― 問題の原因と背景を書きだす

 用紙4― 問題解決のアイデアとアイデアが生みだす効果のシミュレーション

 用紙5― 解決のためのアイデアと実効性評価。予算の有無の書きだす

 用紙6― 実行スケジュールと任務化。
      実行責任者、目的、スケジュールの書きだす

 用紙7― オペレーションマネージャーがみる任務管理シート

この様式通りにやっていくと、自然と問題解決のフローを身につけられる。研修も定期的にやっていて、ヒーヒーいいながら、みんなやってますね。運用は2段階を考えていて。第1段階は会社にたいするロイヤリティをあげること。説明×対話で実行の必要性を訥々(とつとつ)とかたっていくんです。「忙しい」「やりたいのはわかるんだけど、実行は難しいとおもうんですが・・・」いろんな声はかえってくる。けれど、やれば給料UPや昇格チャンスがふえること、やらないとチャンスはめぐってこないことを明確に伝えました。マネジメント層には「これがすべてです」といっています。
第2段階は、賞罰・評価制度にあてこめること。意識が浸透したあとにはじめて制度設計ができます。たとえば、「問題解決を3つやったら、ボーナスがでる」とか。長い間ロイヤリティで働いてもらうのは無理だとおもうし、社員にたいして失礼だとおもう。実行したことにたいしてしっかりと利益還元をする、これが大事だと考えています。


Q:採用時のスクリーニングをどうしていますか?

採用はわりと下手で(笑)。初期のころからメンバーに恵まれていました。人選は確信がないなかでやってきたんだけど、能力も人格的にもすごいひとが集まった。結果としてはよかったんですね。
気をつけていることは使用期間の3ヶ月間で、いろんな仕事をさせる――その働いている姿をほかの社員がどうみているか、これを大事にしています。本人との面談内容よりも、社員からのフィードバックを重視。社風にあわないひとを雇っても、コストですから。新卒採用は半年のインターンシップからの直接登用。厳選して雇用につなげますから、とてもロイヤリティがたかいですね(※3)
チームで仕事をすすめるから、天才もエースもいらない。ではなくてマネージャーになれる人格をもったひとがほしい。とにかくひとを動かせる、リーダーシップがとれるひとですね。

スキルがあっても人格がないと
 
マネージャーには登用できませんから



「Huojinの社員としてふさわしくありません」と社員から評価があがってくることもあって。Houjinの社員は、和を以て尊しと成す。外でも一員として恥じない行動をする。社員の間で自然とコンセンサスがとれているようです。
Huojinに国境はありません。「世界のリソース(※4)をつかってビジネスを成功させよう」と常々いっています。「大連でNo1になろう」じゃない。ライバルはグローバル企業。われわれはグローバル市場から選んでもらえるようになる。世界水準の仕事をやろう。闘う相手は世界水準の企業。だから、たしかにここは中国だけど、「面子にかかわる」とかはやめにしよう――そんな会話が社内で取り交わされています。「このやりかたは世界に通用しないとおもいます!」社員からも意見がかえってきますよね。

※3
もちろん、ただがむしゃらに働くんじゃなくて、「これこれ働いたから、代休をください!」という申請があります。「もちろんどうぞ!」とこたえますが、つねに今日できることは今日、という姿勢が社員から垣間みえますね
※4
当社の管理部は4人。日本民族、漢民族、満州族、蒙古族――みんな民族がちがったんですね。先日、ふと気づきました



Q:社内公用語を英語にするかの議論についてどうおもわれますか?

お客さんが海外にいるのであれば、英語は絶対に必要ですね。どの文脈のうえで議論がなされるかが大事だとおもいます。日本がすすむ道は2つあるとおもっていて。

1)グローバル競争にくらいついて、「Japan As No.1」に再びなる
2)衰退を受けいれて欧米諸国のようになる(※5)

※5
Cool Japanをつきつめる動きですよね。イタリアがいい前例になるんじゃないかな。経済はめちゃくちゃだけど、文化はかっこいいし、クリエイティビティは斬新。そんな国にする


英語公用語を推進するひとは、1)の主張なんでしょうね。マーケットをグローバルにもとめれば必然なこと。遠くはなれた日本で、日本語をつかっても顧客ニーズは探れませんから。

世界中のひとと意思疎通をするのに、英語は一番適した言語なんじゃないでしょうか。だって、文法や発音は気にしなくていいんだから。汎用性が高いんですね。アメリカ自体が移民国家だから、まちがって文法で話そうが発音が悪かろうが、伝わればいいんです。これが中国語や日本語のような英語以外の言語だったらどうか。ちゃんと発音できていないと、聞いたときに拒絶反応をしてしまうでしょう。
当社も社内公用語を英語にするか中国語にするか4年前に悩みましたが(※6)、社内言語を何語にするかよりも大事なことは自国の文化に誇りをもつこと、失わないことだとおもいます。

※6
いまは公然と社内公用語が日本語になりました。わたしが日本語をつかうことがおおいからでしょうか。中国語にしよう!となってだんだん、中国語が浸透してきました


なにが嫌かって
 
日本人が自国にたいして
 
自信がないし、卑屈であること



テレビも雑誌もいいところは取り上げないで、「日本はこんなにダメでした」をとりたてる。高校までアメリカ。大学にはいって憧れの日本にきてビックリしました。No.1でなくてもいい、OECD最下位でもいい――ぼくは日本がじぶんに誇りをもてるようにしたい。だから、技術立国の後押しをする一環として、日本「知財」を活性化するいまの会社をつくった。世界にうってでて一番になるんだという意欲がないなら、英語公用語をやる意味はないですよね。


Q:今後の世界をどうとらえますか?

この1年間で一番ささった話、國領二郎先生のtwitter。つぶやきをたまたまみたんです。みた瞬間にじぶんのビジョンを書きなおそうかなとおもった。
「 若い世代には日本のためなんて狭く考えないで、地球レベルでいいこと考えつつ、思い切り自分を表現してほしい。地球の幸せを日本の幸せにつなげるのは、残留おじさん組で考えるから、振り向かずに世界ではばたいて」
ぼくはこれをものすごい拡大解釈しました。――こういう意味なんじゃないか。日本人であるというだけで、世界的に話題や成果をあげてプレゼンスを発揮すれば、かならず日本にフィードバックがいく。

日本という国を考える必要はない


ただビジネスで成功すればいい、ただスポーツで成功すればいい。世界的に成功することを考えて行動しろ!と。
――三好は、Huojinはどこで産まれたんだ。おお、日本か。日本はそういう国か
「Huojinは日本経済に、中国経済に貢献します」とこれまでのビジョンでは語ってきました。そうじゃなくてこれからは、「グローバル社会に根をおろして、いろんな国で価値をサービスを提供します」に。ただ日本で生まれましたが、従業員には日本人もいれば、中国人もいます――そう変えようかと考えています。中田英寿、日本の名を世界に知らしめた。孫正義さんも、柳井さんも三木谷さんもそうなろうとしていますよね。ぼくもじぶんが仲間と活躍することで、日本に誇りをとりもどす一助になりたいですね。




三好浩和
三重県鈴鹿市生まれ。10代の8年間をアメリカで過ごし日本への憧れを強くする。高校にあがるまでアメリカは途上国だと信じていた。慶應義塾大学SFCでは戦略的意思決定論の印南一路、メディアデザインの奥出直人、ベンチャー経営論の伊藤良二に師事し、サイバービジネス実践とプロジェクトプロデュース論を二重専攻(体育会空手部含めて三重専攻)。在学中にモバイル広告サービス「クーポン打」を運営する株式会社Jukebox Communicationsの設立に参画。その後、日本興隆のヒントを探りに大田区町工場めぐりなどを経て、大学卒業と同時にHuojin
Japan株式会社と大連活今信息科技有限公司を創業。日本企業の中国活用と進出の支援のために独自のBPOサービスの提供を開始、中国現地体制構築・運営能力に定評がある。現在90席の業務センターを運営、うち60席程度が稼働中。創業から5年間、半分以上の時間を中国で過ごし現地への洞察、人間関係を深めて来た。大連市情報産業局ソフトウェア産業協会日本分科会理事。
趣味はランニングとロードバイク。日英中のトライリンガル。座右の銘はCarpe Diem(意訳:今を生きる)。29歳。


中国人社員、活用の試み_1 黒田 篤氏(大連日本商工会元理事長)


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