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やめないよ
評価:
三浦知良
新潮社
¥ 799
(2011-01-14)
コメント:「自分に甘くて、ついつい手を抜いてしまう」「どうすればモチベーションが高く維持できるかわからない」という人にヒントをくれる良書。キングカズのかっこよさを存分に味わえる。ただ、本に書いてあることはキングだからできる類のものなのであって、一般人が真似できる代物ではない。あくまで、すごい人の考え方を覗く、くらいのスランスで読むと良いかも。

ストイックに目の前の課題に一つ一つ取り組んでいく。
その姿勢をとり続けて体調を崩した経緯があるので、カズのいうような「一生懸命に」「逃げない」みたいなスタンスに心の中で「待った!」がかかった。人間って追い込みすぎると死んじゃう。

カズは一般人じゃない、ただ真似するだけだと体を壊す、ということを念頭に入れて、読んだ方が良さそうです。
血と聖
評価:
坂東 眞砂子
角川書店
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(2006-03-25)
コメント:坂東眞砂子と言えば「狂気」、「狂気」と言えば坂東眞砂子。が、他の作品と比べると狂気っぷりはそこはかとなく落ち着いている感じ。

「狂気もんを書かせたら右に出るもんなんかおらんのや!」という坂東眞砂子が挑んだのはイタリアの空飛ぶ聖人ジョゼッペ・ダ・コペルチーノ(wiki英語)を下敷きにした、若い娘と青年修道士との許されざる愛、そして肉欲との葛藤。読了後のまずさといったらこりゃないわ、と思わず口にしたくなるような後味の悪い結末で物語がぱたんと閉じられる。プチホラーが好きな方はどうぞ。
魔の山(上)
評価:
トーマス・マン
新潮社
¥ 961
(1969-02-25)
コメント:とにかくヘビーだ。読みこなすには根気がいる。挫けるな!前を見ろ!

|生活リズムが同じだと、あっという間に時間がすぎるという真理

「時間」とはなにか、「変化」とはなにか、というのがメインテーマの本作。
舞台は文明生活香る都会から離れたスイスの山中にあるダボス村、国際サナトリウム「ベルクホーフ」、魔の山。そこでは毎日単調な生活が繰り返され、療養所にやってくる患者たちの時間感覚を次々に麻痺させていく。一日と一ケ月との間に大きな違いはなく、時間が経つごとにどれほどの期間滞在していて、これからあとどれくらい療養が必要なのか分からなくなる。患者たちはその時間感覚を「水平生活」と称し、ある者は気が狂れ、ある者は症状の悪化を顧みず我慢の限界に抗えず下山する。
友達との何気ない会話や食事の際の些細なやりとりも単調な生活にあっては大きな変化になる、その事実を何度も何度も場面を変え表現を変えマンは文章で表現しているわけだけど、主人公が舞台のサナトリウムに来てからの最初の7日間を描写するのにじつに225ページも割いている(一日あたりおよそ30ページ!ながっ!)。その一日には5度の食事風景が丹念に描かれ、一日、二日と物語が進むごとにいったい何日目の何度目の食事風景なのかよく分からなくなり、知らず知らずのうちに読者も魔の山の時間感覚に浸されていくカラクリになっているわけだ。

本来であれば変化を生み出すために振り込まれたはずの時間が無為のうちに浪費されてしまう。そのことにたいする無念観・焦燥感は長く闘病したことがある人なら共感できる感覚だろう。本作に登場する青年たちも同様の苦悩を抱えており、(32-33p)、病とどう向き合うか、その先にある生と死とをどう自分の中で消化・昇華するのか悪戦苦闘を繰り広げる。ある意味、長期闘病者むけの葛藤マニュアルとも言える。


|最新の医療が最良、というわけではない

もうひとつ長期闘病者にとっての重要な示唆は「最新の医療が最良というわけではない」ということ。小説で描かれた結核患者にたいする当時の最新医療はレントゲン、肺や肋骨などを除去する外科手術、そして屋外静養(毛布にくるまってバルコニーに並べたベッドの上に寝てただすごす)だった。現代ならどうか。結核だと判明すれば、抗生物質で結核菌を殺して治す。肋骨の切除とか毛布にくるまってまで寒い屋外で療養するとか、およそ医療効果が得られそうにない荒行を患者に強いることは絶対にない。だけど、当時はそれが最新の医療技術だと信じられていた。お金のある人はその療養生活を送るために大枚をはたいた。現代に生きるぼくらの目線から見ればなんとも滑稽なことだけど、当時の人たちは本気だったのである。
代替医療のトリック」にも書いてある通り、最新の医療が最良であるとは限らない。その真理を行間に垣間みることができる。


|所得上位層はいつの世もインターナショナルである

昨今話題の「21世紀の資本論」の中でトマ・ピケティが指摘した1910年代のヨーロッパの経済格差。所得上位10%の人間が国富の50%以上を占めていた当時の状況について、ピケティはバルザックの「ゴリオ爺さん」を引き合いに出しているが、本作もまた「ゴリオ爺さん」同様、大戦前夜のヨーロッパの経済格差を書いた文学のひとつと言える。上述の通り、サナトリウムで療養生活を送るには膨大な金がかかったからだ。
そこは富める者たちだけの世界であり、独特のルールがあった。本作では主人公の目線をとおして、いかに「教養があるか(またはないか)」について何度も言及されているわけだが、その世界たるやじつにワールドワイドである。登場人物の出身地はドイツ各地に留まらず、オーストリア、ポーランド、オランダ、フランス、スペイン、ポルトガル、ロシア、はたまたメキシコなど、じつに多方面にわたり、世界中の富める者たち(長期療養生活に耐えられる経済力を持った人)がスイスのダボスに集結した様を色彩豊かに描写している。

†ふたたび一部の人間による富の独占が亢進している現在の世界。ドバイとかシンガポールとかの上流階級の生活スタイルをテレビとかで見ると、同じく「魔の山」状況になっていて、細かいことにいちいち釘を刺して、教養の有る無しを詮議していて、あー大変だなと思う(「世界の日本人妻は見た!」とか)


|けっこうヘビーな「教養小説」

雑感としては、「ドイツ教養小説の伝統に則ったマンの代表作の一つ」と言われるだけあって、けっこうヘビーでするすると読みすすめられる類の文学作品ではない。生物学、生理学、解剖学に関する用語がパレードしており、度々「あれ、今医学書読んでるんだっけ?」と錯覚に陥る。こうした専門用語は海老フライ定食に例えるとパセリだ。本作のメインディッシュ、つまり海老は、前述の「時間感覚」なので、パセリにぶちあたったら、テキトーに読み進めて先を急ごう。
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解夏
評価:
さだ まさし
幻冬舎
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(2002-11)
コメント:泣ける一作。心温まる一冊。「生きていることの哀しさ、そして素晴らしさ」を感じたい時に手に取りましょう。

初めて読んだのは23才だったか。それ以来、心が寒くなったと感じるたびに手に取って、「生きる」ことの温かみを分けてもらっている。そんな一冊。

「解夏」「秋桜(あきざくら)」「水底の村」「サクラサク」の4つの短編集からなる。
ぼくはずっとフィリピン女性が田舎に嫁入りして、彼女を必死に守ろうとする義父母を書いた「秋桜」が好きだったのだけど、今読んでみると好みが変わった。
幼馴染の邂逅と人生のすったもんだを含ませた「水底の村」や、社長への道が拓けた会社人生を棄てて痴呆で意識がなくなっていく父と壊れて冷えきった家族関係の修復を模索する旅を描いた「サクラサク」のほうが心に響いた。
それは水底の村の主人公がじぶんと同じ30代で、サクラサクは両親の介護がそろそろ射程に入ってきたことからきているのかもしれない。

なお、解夏については映画かもされてます。予告編はコチラ↓



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色彩を持たない多崎つくると、
彼の巡礼の年
評価:
村上 春樹
文藝春秋
¥ 1,836
(2013-04-12)
コメント:まあ、とにかく読んでみよう。

最終的には「やられた」と感じた一作。でもまた読もうとは・・現時点では思わない。
作品の概要についてはWikipediaを参照のこと。

そもそも春樹作品が好きではなかったわたくし。最初に読んだのは「東京奇譚集」、かれこれ5年ほど前になるか。

非日常的(つまり文語調)な登場人物たちの言い回し、意図的に作品の前面に出された記号群(まるで「さあ、どんどん消費してくれ」と言わんばかりに)、重々しい話の伏線と格言。そのどれをとっても、「ああ、読むのが面倒くさいや」とぼくは思ってしまう。
特に作品に精巧に配置された記号群を消化するのが一苦労だ。春樹の作品を読むには傍らに常にスマホが欠かせない。出てくる曲、ワインの種類、車の種類、服のブランド。ほんともうめんどくさい。が、その面倒臭さを乗り越えて作品を読み終えると、何とも言えない奥ゆかしさに出会うことになる。
この記号とどう苦闘するかについては、NHK「ニッポン戦後サブカルチャー史 第6回」の「なんとなくクリスタル」注釈論争の部分を参考にどうぞ。
しあわせ中国 盛世2013年
評価:
陳 冠中
新潮社
¥ 2,415
(2012-10-31)
コメント:あちゃちゃ・・・と思うような直訳ッぷりのせいで内容が頭に全然入ってこない話題の小説。過激な内容から中国本土では発禁処分にあったというが・・・

中国の作家、陳冠中の一作。大陸では発禁処分にあっています。
ハッキリ言うと、翻訳が直訳すぎて陳の世界に入りきれません。20pほど読んで、諦めた。。
どんな本かというと・・・

良い地獄か、偽の天国か──中国の将来を予言する衝撃の近未来小説。二〇一三年、中国は太平と繁栄を謳歌し、人々はみな幸福感に溢れている。しかし、その幸福感を偽りだと感じるごくわずかな人たちが存在していた。そして、彼らにより明らかとなったのは、政府の驚くべき秘密計画だった……。党内結社の存在、地下教会、環境破壊──中国の水面下に蠢くさまざまな現実を浮彫りにする異色長編。(Amazon内容紹介より)


興味のある方はネットで調べて「陈冠中《盛世:中国2013》」の原文を読んで下さいまし。




日暮らし(下)
評価:
宮部 みゆき
講談社
¥ 1,680
(2004-12-22)

ちかくの図書館で借りて読みました。
作中に子盗り鬼といって子供を食べてしまう鬼伝説がでてくるんだけど。人が鬼になっていく過程がみてとれてぞぞっと鳥肌が立った。
しかしまあ、鬼ってぼくらの現代生活のなかにもいるんだよなあとあらためて認識しました(「ヒト、コワレテノチ、鬼トナリヌ」で鬼を実際にみた感想を書いていた)。
日暮らし(上)
評価:
宮部 みゆき
講談社
¥ 1,680
(2004-12-22)
コメント:夏のちょっとした昼下がり。日陰に座布団をたたんでおいて頭をのせてぼんやりと読むのに適した一作。江戸の同心平四郎と甥っ子の美少年弓之助が湊屋の謎をきりすすむ。弓之助と友人のおでこさんとのかけあいがほっこりする。

ざ・宮部みゆきワールドの一作。
軽快な物語展開、適度に挟まれるほっこりさせる人物たちの挙措。つらつらとページをめくり気づいたら最後まで読みすすめてしまう面白みが本作にはある。
舞台は江戸だけど、歴史物というよりはちょっとしたサスペンス+人情小説といったところ。
ちょうどこれからの夏の季節に、縁側にひっぱりだして読みたくなるような感じでした。
アメリカ第二次南北戦争
評価:
佐藤 賢一
光文社
¥ 1,785
(2006-08-22)
コメント:本当におこってもおかしくない話。日本の立場に立って、アメリカが中国に宣戦布告をするとしたらどう対応するだろうか。どんなシナリオで回避するだろうか。そのひとつの答えが本書につめこまれている。我が事なのでドキドキします。

アメリカの自我が二つに分裂する

ときは二〇一六年、未曾有の繁栄を謳歌していたアメリカは二つの国に分裂し、覇権を巡って内戦に揺れていた。従来路線の連邦主義、覇権主義、銃規制賛成をかかげるアメリカ合衆国。従来路線を修正した州権主義、モンロー主義、銃規制反対をとなえるアメリカ連合国。一九世紀の南北戦争さながらにふたつのイデオロギーはおおきな戦乱の渦を呼び、世界各国はその動向をつぶさに観察しながらもしたたかに戦争景気で自らの懐をうるおす。そんなアメリカに日本人ジャーナリスト森山悟が取材でやってきて。。

フロンティア・スピリットは東洋人の血をもって守られる

作中に出てくる架空の書籍、マイケル・ヨーの『アメリカ史』はこうアメリカの覇権に至る道を描き出す。すなわちアメリカのフロンティアスピリットとは、東洋人にたいする虐殺の歴史とコインの裏表のように密接に繋がっているのだと。建国時にはインディアン、第二次世界大戦で日本、そして朝鮮、ベトナムへと東洋人根絶やしの戦戈を東へ東へとむけていく。
アメリカが自らの存在意義をイデオロギーに求める限り、そのイデオロギーの象徴たる民主主義をひろめる聖戦はかかせない。ゆえにその歴史はつねに戦争の影を身に帯びているのだ。やがてその影は太平洋を遙か越えて中国大陸にやってきて。中国に開戦をふみきろうとした大統領が暗殺され、それを景気に南部諸州が連合国を宣言、南北戦争がはじまるわけだが。
この本が執筆された2004年は、イラク戦争開戦の1年後。みなさん、その意義をどうとらえますか?

なお、本書に出てくる年号をそえられた歴史的な事実や人物、書籍はまったくのフィクションなのであしからず。Googleで検索してもでてこないです。はい。
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そのときは彼によろしく
評価:
市川 拓司
小学館
¥ 1,575
(2004-03-31)
コメント:文中に「ふむ」「なるほど」と記載するのは、ぼくらチャット世代の共感をよびそうだ。それに、なんだか、チラリチラリと村上春樹の息吹が作中に感じられる。もしかしたら、著者が好きなのかもしれない。

いくまさんから借りた本の一冊。
主人公のひとりの森川花梨、ものすごくタイプだったりする。美人で、性格が男勝りで、頭もいい。本をよみながら、初恋のひとのことを思い出した。
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